シネサルの「映画のブログ」

星(★/☆)の採点は、★4つで満点 ☆は0.5 ★★★★人類の宝/★★★☆必見/★★★オススメ/★★☆及第点/★★中間レベル/★☆パスしてよし/★ひどい/☆この世から消えろ

 『パシフィック・リム』 ★★☆

【原題】Pacific Rim(意味「環太平洋」)
2013年、アメリカ、カラー、1:1.85、131分、英語&日本語&広東語&北京語(日本語字幕)
【監督&脚本&製作】ギレルモ・デル・トロ、他
【出演】チャーリー・ハナムイドリス・エルバ菊地凛子チャーリー・デイ、ロブ・カジンスキー、マックス・マーティーニ芦田愛菜ロン・パールマンバーン・ゴーマン、クリフトン・コリンズ・Jr、ディエゴ・クラテンホフ、他
2013/08/01(木)鑑賞、よみうりホール
<ストーリー>
 別の宇宙との通り道のワームホールが環太平洋の海溝に通じ、そこから現れた地球侵略を狙う「KAIJU」に、人類は巨大ロボットで立ち向かう。
<感想>
 KAIJUなんて役名つけるから、マニアックな映画かと思いきや、意外に小細工は無く、戦い方が飛び道具や光線ではなく肉弾戦主体なように、武骨に力で押しまくる作風の作品。
 そのせいか、前半は目新しさのなさに不満も感じたが、終わってみれば力業で押しまくることの良さが発揮されていて、緊張感を維持しながら、かといって一本調子になっていないセンスの良さも見られた。、

 『パリ、ただよう花』 ★★★☆

【原題】Love and Bruises(意味「恋と傷心」)
2011年、フランス=中国、カラー、1:1.85、105分、仏語&北京語(日本語字幕)
【監督&脚本】ロウ・イエ、他【原作】リウ・ジエ「裸」
【出演】コリーヌ・ヤン、タハール・ラヒム、他
2013/12/27(金)鑑賞、UPLINK X、約7人/約40席
<ストーリー>
 恋人がいながら、北京で知り合ったフランス人の男を追ってパリの大学に留学した中国人の女が、到着早々そのフランス人男性に振られて、直後に出くわした肉体労働者の男と、薄々ろくでなしと感じながらも、ズルズルと離れられず踏み込めずの関係を続ける。
<感想>
 傍目には不合理とも思えるダメな恋愛を、絶妙の自然な演出でわざとらしさや嘘くささを感じさせず観る者を惹き付け続けるロウ・イエ監督の手腕は素晴らしく、並の映画監督では到達できない領域に達している。

 『ブリングリング』 ★★☆

【原題】The Bling Ring(意味「(劇中の実在の窃盗団の愛称)、派手な宝飾品」)
2013年、アメリカ、カラー、1:1.85、90分、英語(日本語字幕)
【監督&脚本】ソフィア・コッポラ
【出演】ケイティ・チャン、イズラエル・ブルサード、タイッサ・ファーミガ、クレア・ジュリアン、エマ・ワトソンパリス・ヒルトンキルスティン・ダンストリンジー・ローハン、他
2013/12/17(火)鑑賞、丸の内TOEI2(約25人)
<感想>
 日本で言えば、バイト先の飲食店で冷蔵庫に入ったりした写真を自らネットにばらまいてしまう「バカッター」事件のように、羽目を外して軽い気持ちで犯罪(窃盗)に走る若者を描く。
 実際にこんな事件があると「何故そんなバカなことを…」と思うものだが、その理由として「楽しいことを追求するノリの延長」という風に描かれていて、そんな楽しい気分や、歯止めのない状態を犯人側目線で感じさせてくれる。
 とはいえ、決して犯人たちに同情的ではなく、全体的には客観的に出来事を描いていて、むしろ突き放している印象。

 以前のコッポラ監督作品の『マリー・アントワネット』でも、感性に対して従順に振る舞う彼女を描いていた。
 ただし、前作ではその志向を肯定的に描いていたと思うが、本作では好意的ではない点では一致していない。

 監督の興味のポイントは、感性に突き動かされてハッピーになろうと行動することそのものなのかもしれない。
 あくまで、そんな人の是非は置いておいて。
 特に、エマ・ワトソン演じるメンバーの1人がラストに見せるような歪んだキャラに対しては、「こういう人間もいる」という冷めた描き方をしているように思えた。

 ともかく、感性に対して真摯なスタンスで切り込んで人間を描いていることには共感を覚える。

 『ハンナ・アーレント』 ★★☆

【原題】Hannah Arendt(意味:主役の実在の人物名)
2012年、ドイツ⁼ルクセンブルグ⁼フランス、カラー、1:2.35、113分、英語&ヘブライ語&独語&他(日本語字幕)
【監督&脚本】マルガレーテ・フォン・トロッタ
【出演】バルバラ・スコヴァ、他
2013/11/29(金)鑑賞、岩波ホール
<ストーリー>
 元ナチス戦争犯罪人アイヒマンを平凡な人間と評したことで、ナチス擁護のレッテルを世間から貼られたユダヤ人哲学者のハンナ・アーレントの物語。
<感想>
 タイトルからすると、アイヒマン関連以外も含む彼女の人生全体の映画のように思われ、実際そうなのだが、結果としてはアイヒマン関連の比重が大きかった。
 論争になったことに関しては、本作を観る限り彼女の主張が100%正しく、クライマックスで学生たちに向けて堂々と主張したとおり「人物のありのままを見ようとするのと、罪を許すことは、全くの別問題」である。
 その事を考えようともせずに多くの人が悪魔認定したアイヒマンを悪魔扱いしなかっただけで「手先」呼ばわりするのは、彼女が重要だと訴えた「思考すること」を早々に放棄していることの最たるものである。
 もっと解りやすい例えを挙げると、人を殺すことが「悪」かと言えば、戦時中は多くの人間を殺すことは善ともされるので、そんないい加減な善悪のイメージに囚われて人を評価することなど明らかに間違っている。

 以上のことは、わざわざ映画のテーマするまでもない、当たり前過ぎることだと思うのだが、現実には今の日本でも、事件があると特定の人々や団体に悪のレッテルを貼り、マスコミは吊し上げに躍起になっているのは日常事なので、同じ過ちを何度も繰り返す愚かな人類には、余計なお世話と思えるくらいの警鐘を鳴らし続けることが必要なのかも。

 『ペンギン夫婦の作りかた』 ★☆

2012年、日本、カラー、1:1.85、90分、日本語&北京語
【監督&脚本】平林克理、他【原案】辺銀愛理「ペンギン夫婦がつくった石垣島ラー油のはなし」
【出演】小池栄子、ワン・チュアンイー、深水元基、他
2013/12/06(金)鑑賞、WOWOW放映
<ストーリー>
 北京で知り合って結婚して東京で働く歩美(小池)と中国人のギョウコウは、夫の失業の気晴らしで旅行した石垣島に住むことにし、働きながら独自のラー油を完成させる。
 ラー油は次第に評判になり、ギョウコウは歩美と同じ姓を名乗るため帰化を申請する。
<感想>
 困難がつきものの環境の変化がいくつも含まれたストーリーだが、主人公が気に入った南の島ののんびりした雰囲気そのままに、暗い展開はほとんどなく、楽観的に進行していく。
 「何となくいい雰囲気」な映画って、作り手のさじ加減を間違うと、散漫なだけだったり逆に押しつけがましかったりで難しいと思うのだが、本作も数々の小細工が主題をぼやけさせてしまったと思う。
 特に気になったのは、帰化申請の面接中に時々回想シーンを挟む形式になっていること。
 時間が前後することで自然な流れが分断されるのと、帰化が特別な問題としてクローズアップされることになるのだが、上に述べたように全体的に帰化も含めて苦労はサラッと描かれているので、どうも釣り合わない。
 回想のない構成にした方が良かったと思う。
 小池栄子は、アップが画になって相変わらずいいけど。
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 『ぱいかじ南海作戦』 ★☆

(意味:ぱいかじ=南風を意味する現地の言葉)
2012年、日本、カラー、1:1.85、115分、日本語
【監督&脚本】細川徹【原作】椎名誠
【出演】阿部サダヲ永山絢斗貫地谷しほり佐々木希ピエール瀧浅野和之斉木しげる大水洋介、他
2013/12/06(金)鑑賞、WOWOW放映
<ストーリー>
 会社をクビになって妻とも別れた佐々木(阿部)は、行き当たりばったりで西表島(?)の砂浜に来ると、現地の人数人と仲良くなって、魚を獲ったり野宿したりで楽しく過ごした。
 しかし彼らはある日、佐々木の貯金通帳など全財産の盗んで姿をくらました。
 佐々木は、自分と同じように浜にたどり着いた旅行者のオッコチ(永山)や2人の女(貫地谷&佐々木)たちのテントなどを当てにしながら一緒に野宿し、将来に対して前向きな気分になっていった。
<感想>
 失業、離婚、略奪と次々に大きな不幸に見舞われる話とはいえ、リアリティのかけらもなく全編ふざけた調子で展開するので、真面目に考える作品ではない。
 「何でもアリ」だから許されるかといえば、実は「面白ければ…」という条件は必ず付いているはずなのだが、果たしてこの映画が「面白くなる」とか「喜んでもらえる」という勝算があって作られたのか?甚だ疑問。
 観終わって、あっという間に忘れそうな作品。
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 『必死の逃亡者』 ★★★

【原題】The Desperate Hours(意味「必死の時間」)
1955年、アメリカ、モノクロ、1:1.85、112分、英語(日本語字幕)
【監督&製作】ウィリアム・ワイラー【脚本&原作】ジョセフ・ヘイズ
【出演】ハンフリー・ボガートフレドリック・マーチアーサー・ケネディマーサ・スコット、デューイ・マーティン、ギグ・ヤング、メアリー・マーフィ、ロバート・ミドルトン、他
2013/12/04(水)鑑賞、WOWOW放映
<ストーリー>
 脱獄した3人が会社重役の家に逃げ込み、妻と子供2人を含む4人の家族に、自分たちの事を誰かに話したら家族の命は無いと言って、普段通りに出勤させたりした。
 しかし、家族と関わりのある人たちが訪ねてきたり、警察の捜査が迫って家族に危険が及びそうになるなどの危機が次々と押し寄せた。
<感想>
 緊迫感があって数々の見せ場も散りばめ、かつ何の破たんもなく展開する上質なサスペンス。
 悪役も被害者も人物設定に厚みがあり、庭に転がったままの自転車が印象を残すなど、隅々まで配慮が行き届いている。
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