シネサルの「映画のブログ」

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『くずと接吻』 ★★

2018年、日本、カラー、1:1.78、日本語、47分
【監督】武子直樹【原作】江戸川乱歩「接吻」
2018/11/13(火)04:00 & 2018/11/20(火)04:00放送 TOKYO MXTV、2018/11/20(火)鑑賞
参照サイト:https://www.ncws.co.jp/mh18/mh18-ob.html
【ストーリー、ネタばれ有り】
 山名宗三は、世の中のあらゆる人間を見下し、心の中で罵倒し続けていた。
 彼の妻が画面に接吻したスマホを盗み見ると、彼の上司で妻とサークルで一緒だったムラヤマ課長とのツーショット写真だった。
 宗三の疑惑は膨らみ、ついに課長に向かって爆発して会社を辞めたが、ただの勘違いで浮気はしてないと妻に言われ、さらには他人に対して冷淡な夫の態度を罵った。
【感想】
 冒頭から、世の中のあらゆる人間への憎悪を独白で罵りまくる主人公。
 表現力と勢いだけは持ち合わせているが、言葉の中身からはいかにもポンコツ人間が自分を棚に上げて他人を見下したいムチャクチャなキャラだと解る。
 そんな主人公の心象風景を、都会の風景を切り取ったモンタージュによるクールっぽい映像との組み合わせで見せるのは、ユニークで面白いと思った。
 『フォーリング・ダウン』のように、異常な主人公を中心に異常性が尻上がりに増していく作品を無意識に期待したのだが、結果は逆だった。
 社会全体に向けていた主人公の憎悪の矛先は、妻とその浮気相手の自分の上司の2人だけに矮小化される。
 冒頭ではユニークだった映像表現も、終盤になるにしたがって徐々に普通っぽくなっていく(妄想のチャンバラシーンも含む)。
 実は、江戸川乱歩の原作のストーリーは、妻の浮気疑惑が妄想で膨らんでいって押さえきれなくなるという典型的な物なので、普通っぽくなるのがむしろ自然なのかもしれない。
 ならば、「冒頭で飛ばし過ぎた結果、尻すぼみに感じてしまった」ように感じたペース配分が問題で、「それだけでかなり損したのでは?」と思った。