シネサルの「映画のブログ」

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 『風立ちぬ』(2013 日) ★★★

【監督&脚本&原作】宮崎駿
【出演】庵野秀明瀧本美織西島秀俊、西村雅彦、スティーブン・アルパート、風間杜夫竹下景子志田未来國村隼大竹しのぶ野村萬斎、他
2013/09/26(木)鑑賞、MOVIX橋本9
 時間の流れ(=過去)や空間や生死といった、どうにもならない隔たりが存在する「現実」に対抗して、妄想力を駆使して美しさの世界を形成しつつ、それを前向きな力にして現実と向き合う。
 なんか、まるで大林宣彦作品みたいだ。
 ラストに流れる、アナログレコードの再生による荒井由実の「ひこうき雲」も、1970年代という、もはやこの世にはなく人の思い出の中にしか存在しない美しい過去の世界の一要素といった感じ。

 これまでの宮崎作品は、スクリーンの中で成立するもう一つの現実を作り、そのことを観る者にしっかり納得させるようなものだった。
 そのような能動的なイメージに対し、『風立ちぬ』は前述のように、現実の困難や不幸を受け入れるような受動的な印象を受け、これまでとの作品と比べるとかなり違っていると思った。
 どんな監督でも年齢を重ねるにつれて、力技でねじ伏せるような作風から、力を抜いてこだわりのない自由な表現をするように変化すると思うが、ここにきて宮崎監督にもついにそんな変化が表れた感じ。
 彼は長編はもう作らないと宣言したものの、新たな段階に入った彼の新作を今後も期待したい。
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