【原題】"Passion"
2012年、フランス=ドイツ、カラー、1:1.85、101分、英語&独語(日本語字幕)
【監督&脚本】ブライアン・デ・パルマ
【出演】レイチェル・マクアダムス、ノオミ・ラパス、他
2013/10/05(土)鑑賞、TOHOシネマズみゆき座
ブライアン・デ・パルマといえばヒッチコック・フォロワーとしておなじみだが、同時に自分自身のフォロワーでもあり、自作において上手くいった表現方法を繰り返し用いている。(自作フォローはヒッチもやってたことだけど。)
特に『キャリー』や『殺しのドレス』といった彼の代表作はフォロー率が高く、両作品において特に素晴らしかった長時間のスローモーションは、彼の代表的な映像表現と言っていい。
彼のそんな姿勢を、マンネリで嫌っているかといえばむしろ逆。
スローを映像の味付けとして使う監督はいても、スローの表現を極めようとするかの徹底ぶりを見せるのは彼ぐらいしかいない。
映画ならではの映像表現を追及するのは映画作家としては当然だと思うのだが、何故かそれを律儀に行っているのがデ・パルマだけで、他の誰も真似をしようともしないから、ここはデ・パルマの一代芸として、彼にどんどん披露してもらうしかない。
『パッション』では、前半はデ・パルマの芸はなりを潜めていたが、後半になってスローのシーンが現れたりしだした。
今回はスローモーションよりも、現実と非現実の境目があいまいになっていく展開の方が前面に出ている。
これは『悪魔のシスター』から始まって、最近の『ファム・ファタール』にも見られるように、デ・パルマ作品でいくつも見られた特徴的な展開だが、一番上手くいったのは『殺しのドレス』だろう。
こうしてデ・パルマは、過去の自作における表現の成功例を元に、新たな傑作シーンの創造に励むのだが、比較対象が判りやすいのでどうしても比べて観てしまうのと、その対象が映画史に燦然と輝く出来栄えなので、元々が不利なに置かれている。
それは承知だから、こっちも決して高望みはしていないのだが、それでも「観て良かった」と思える程のレベルに達していないと、反動で失望感も大きくなる。
まあ、何が現実か判らなくなっていく展開はちょっと面白かったんだけど、今回は今ひとつ及ばずといったところかな?
それでも、次も観るんだけどね。
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