シネサルの「映画のブログ」

星(★/☆)の採点は、★4つで満点 ☆は0.5 ★★★★人類の宝/★★★☆必見/★★★オススメ/★★☆及第点/★★中間レベル/★☆パスしてよし/★ひどい/☆この世から消えろ

 2010/05/10(月)〜2010/05/12(水)の日記 (鈴木英夫、『春との旅』、秋吉久美子)

【5/10(月)】
 朝からセミナー2日目。
 5/07(金)と同じ時間の電車に乗り、昨夜遅くまで起きていて寝不足気味だったので、座席で眠りながら移動し、
セミナーも問題なくやりとおす。
 終了後、地下鉄で渋谷で移動し、シネマヴェーラ渋谷での「映画作家鈴木英夫のすべて」から『爆笑野郎 大事件』(★★)『魔子恐るべし』(★★☆)の2本立てを観に行く。
 開映時刻17:20のかなり前に余裕で到着。
 お客さんは、思っていたより多くて40人ぐらいで、ほぼ全員男。
 最初に『爆笑野郎 大事件』の上映。
 プリントは古く、かなり褪色していて、青はほとんど残ってなくて、大半が赤の画面に少し黄色があるくらいで、時々断裂もしていた。
 主役は晴乃チック・タックで、ものすごく久しぶりに見た。
 ていうか、ちゃんと見たのは実質初めて。
 専務役の有島一郎はやっぱり天才的に面白くて、映画全体も軽く楽しめる。
 終映は18:40ごろ。
..............................................
 続いて18:50から『魔子恐るべし』の上映。
 八ヶ岳で出会った画家を追って列車で上京した、独特な訛りと「くの一」みたいな格好の魔子を、彼女の世間知らずにつけこんだ男たちが狙うけども、野生児の彼女は一筋縄ではいかなくて…、といった内容で、演じる根岸明美も魅力的だし、森繁久彌をはじめとした脇役たちもくせもの揃いで、ストーリーも二転三転で、とにかく面白い。
 でも、寝不足に負けて、5分間ぐらいストーリーが抜けている。
 終映は20:20頃で、今日はこれといって観たいレイトショーがなかったので、そのまま渋谷駅から電車に乗って帰る。
==============================================
【5/11(火)、曇】
 夜に春との旅』(★★)の試写会に行くので、それとハシゴする映画を探して、結局フィルムセンターでの特集「発掘された映画たち2010」「実験映画の系譜:荻野茂二から松本俊夫へ」を観に行く。
 開映時刻15:00の20分前ぐらいにフィルムセンターに入場。
 お客さんは50人ぐらい。
 まずは、フィルムセンターの資料によると、個人で実験映画を作っていた荻野茂二の作品の数々から。
 全体の印象をざっと言うと、40年ぐらい前には普通だったアニメっぽい映像を、戦前に既に個人で作っていたことが国内外で評価されていたと思われるが、さすがに今となっては驚きはあまりない、といった感じ。
 『街』(1930年、白黒、無声、★☆)
 東京の各地の風景の短いカットをつなぎ合わせたモンタージュで、音楽的っぽくリズムで映像をみせようとしている感じ。
 『母を迎へて』(1931年、白黒、無声、★☆)
 田舎から上京してきた母を連れて、主に上野松坂屋に連れて行って楽しんでもらうという、松坂屋の広報映画で、作りはオーソドックス。
 『?/三角のプリズム/トランプの爭』(1932年、白黒、無声、★)
 幾何学模様によるアニメ。
 『RIVER』(1933年、白黒、無声、★)
 上流から下流まで、川の流れのさまざまな映像。
 『PROPAGATE(開花)』(1935年、白黒、無声、★)
 幾何学模様を元に開花する様子を描いたアニメ。
 『AN EXPRESSION(表現)』(1935年、彩色、無声、★)
 幾何学模様によるアニメで、モノクロフィルムに1コマずつ色を塗る彩色によるカラー映画。
 『RHYTHM』(1935年、白黒、無声、★★)
 同じ動きを繰り返すモノを接写で撮影することで、上記のアニメを実写で再現したような作品だが、アニメには無いボケやブレが写っているので、アニメより生っぽい画面になって、催眠術をかけられているような眠気を感じる。
 『寒天』(1937年、パートカラー、無声+BGM、★☆)
 天草の採集から寒天が出来るまでを写した、文化映画のような作品。
 最後の、寒天の用途を紹介する実写部分が、おそらくコダクロームあたりで撮影されたカラー映像。
 『水の幻想』(1981年、カラー、無声+BGM、★★)
 上記の『RHYTHM』と同様に、水の繰り返しの動きを接写で映した眠気を誘う映像で、違いは照明の色を変化させながらカラーで撮影しているのと、シンセサイザーによると思われるBGMがついていること。
 『水の幻想』以外の作品が無声映画だったので、これもおそらく1950年代ごろの作品で、テープを逆回転したりして電子楽器っぽい音にしたのだろうと思っていたら、1981年作品だった。
.
 以上が荻野茂二作品で、残る1本が松本俊夫他2名の監督による『銀輪』(★★)。
 日本自転車工業会の海外PR用短編で、自転車の絵本を見ていた少年の空想を描いている。
 「オリジナルネガが2005年に発見されて、デジタル復元と三色分解ネガから光学的にカラープリントを作った」という意味のことがフィルムセンターのパンフレットに書かれているから、発見されたのはコニカラーの三色分解白黒ネガで、それをデジタルで復元して三色分解ネガを作り直したということなのだろうか?
 以上、終映は16:30頃。
........................................
 次の『春との旅』の開場時刻が1時間半後の18:00なので、銀座をぶらつくのとコーヒーショップで時間をつぶして、18:00ごろによみうりホールに行って、行列に並んで入場。
 今日は、主演の仲代達矢徳永えり、そして小林政広監督の舞台挨拶があったので、マスコミのテレビカメラも入っていたりしたので、ほぼ満席でも定員の90%ぐらいの入り。
 開演時刻18:30になって、伊藤さとりさんの司会で登壇者の3人が客席後方入り口から入場して、それをお客さんたちが用意された桜の造花を振って出迎えるという演出。
 そして、インタビュー形式で舞台挨拶と、それに徳永えりちゃんの誕生祝いの花束贈呈、酒樽の鏡割り、マスコミの撮影などが行われる。
 そして、19:00から本編の上映が始まり、終映は21:15頃。
 もうちょっと早く終わっていたら、銀座シネパトスまで歩いていって21:00からのレイトショーを観るつもりだったが、完全に時間が過ぎていたので、諦めてアンケートに記入して帰路につく。
=========================================
【5/12(水)】
 セミナー3日目で最終日。
 今日も前2回と同じ発車時刻の電車。
 今日は、セミナー終了後の映画の予定で、地下鉄に4回乗るつもりだったので、地下鉄乗り放題の「東急東京メトロパス」を買う。
 昼休みに、外に出て昼ごはんを食べるところを探してウロウロしていると、ラーメン二郎に行列ができていたのを見かけてビックリ。
 セミナー最終日ということで、最後のQ&Aが長引いて終了時間が予定より遅くなってしまって、このあと観ようと思っていたシネマヴェーラ渋谷での「映画作家鈴木英夫のすべて」から殺人容疑者』(★★☆)『サラリーマン目白三平 亭主のためいきの巻』(★★)の2本立てへと急ぐ。
 しかし、結局開映時刻の16:50に間に合わず、約5分遅れて『殺人容疑者』を観始める。
 『野良犬』(1949)などに続く、刑事モノの先駆けみたいな作品だろうか?
 尾行の途中で「待て!」と叫んで走って追うはめになったりなど、さきがけにありがちな不合理な展開がチラホラ。
 それでも、下水道に身を潜めた丹波哲郎を追い詰めるところなどの、息も詰まるような緊迫感は鈴木監督ならでは。
 終映は18:05頃。
..........................................
 続いて、18:15から『サラリーマン目白三平 亭主のためいきの巻』の上映。
 劇中、1960年当時の、2両編成の小田急線と、跨線橋(変換できない。IMEって、こんな一般名詞も辞書に持ってないの?)もなく駅前にも何もない柿生駅が映される。
 終映は19:35頃。
..........................................
 続いて19:45から、見逃した『殺人容疑者』の冒頭5分間を観る。
 これがデビュー作にして主役の丹波哲郎は、エンドクレジットでは本名の「丹波正三郎」名義になっていたが、冒頭では「丹波哲郎」名義になっていた。
 16mmプリントでの上映だったし、冒頭にあってしかるべき新東宝のロゴもなかったので、冒頭部分は後年変更さられたのかも。
 5分ぐらい観て、劇場を後にする。
..........................................
 続いて、銀座シネパトスでの特集秋吉久美子映画祭」から『さらば夏の光よ』(★★☆)を観るために、銀座に移動。
 開映まで30分間ぐらいコーヒーショップで時間をつぶす。
 開映時刻21:00の10分ぐらい前にチケットを買って、シネパトス3に入場。
 お客さんは、今夜も思ったより多く、ほとんど男ばかり30人ぐらい。
 『さらば夏の光よ』は、主人公の郷ひろみが親友の川口厚と、秋吉久美子を取り合うという、絵に描いたような三角関係で、これだけでもかなり不幸なのに、その上さらに不幸が重なる。
 でも、結局この手の不幸なストーリーの映画がダメになりがちなのは、「不幸過ぎるから」ではなく、「作り手に不幸なストーリーと向き合う覚悟がないから」であって、この映画のように最も重要な土台部分がキッチリ作られていると感じられるのが嬉しい。
 終映は22:30ごろで、帰ろうと思って劇場を後にして銀座駅へと向かう。
 ところが、途中でポケットに入れておいたはずの東急東京メトロパスがなくなっていることに気づいた。
 銀座に来るまではあったはずなので、シネパトスのチケットブースでチケットを買うときに、ポケットから財布を出したはずみで切符が落ちたぐらいしか思い当たらなかった。
 そこで、ダメ元でシネパトスに戻ってチケットブースに行くと、カウンターの上にまさに90分前に落とした切符が置かれてあった。
 この切符をネコババすれば地下鉄を乗り放題できたのに、どうやら三原橋の下(シネパトスや飲食店があるところ)には悪い人はいないようだ。
 改めて銀座駅から帰路に着く。