シネサルの「映画のブログ」

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 『ハンナ・アーレント』 ★★☆

【原題】Hannah Arendt(意味:主役の実在の人物名)
2012年、ドイツ⁼ルクセンブルグ⁼フランス、カラー、1:2.35、113分、英語&ヘブライ語&独語&他(日本語字幕)
【監督&脚本】マルガレーテ・フォン・トロッタ
【出演】バルバラ・スコヴァ、他
2013/11/29(金)鑑賞、岩波ホール
<ストーリー>
 元ナチス戦争犯罪人アイヒマンを平凡な人間と評したことで、ナチス擁護のレッテルを世間から貼られたユダヤ人哲学者のハンナ・アーレントの物語。
<感想>
 タイトルからすると、アイヒマン関連以外も含む彼女の人生全体の映画のように思われ、実際そうなのだが、結果としてはアイヒマン関連の比重が大きかった。
 論争になったことに関しては、本作を観る限り彼女の主張が100%正しく、クライマックスで学生たちに向けて堂々と主張したとおり「人物のありのままを見ようとするのと、罪を許すことは、全くの別問題」である。
 その事を考えようともせずに多くの人が悪魔認定したアイヒマンを悪魔扱いしなかっただけで「手先」呼ばわりするのは、彼女が重要だと訴えた「思考すること」を早々に放棄していることの最たるものである。
 もっと解りやすい例えを挙げると、人を殺すことが「悪」かと言えば、戦時中は多くの人間を殺すことは善ともされるので、そんないい加減な善悪のイメージに囚われて人を評価することなど明らかに間違っている。

 以上のことは、わざわざ映画のテーマするまでもない、当たり前過ぎることだと思うのだが、現実には今の日本でも、事件があると特定の人々や団体に悪のレッテルを貼り、マスコミは吊し上げに躍起になっているのは日常事なので、同じ過ちを何度も繰り返す愚かな人類には、余計なお世話と思えるくらいの警鐘を鳴らし続けることが必要なのかも。