シネサルの「映画のブログ」

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 日本インターネット映画大賞、2006年度日本映画

【作品賞】(5本以上10本まで)
  「 嫌われ松子の一生  」   8点
  「 フラガール     」   6点
  「 ゆれる       」   5点
  「 紀子の食卓     」   5点
  「 あおげば尊し    」   1点
  「 HAZE        」   1点
  「 好きだ、      」   1点
  「 やわらかい生活   」   1点
  「 輪廻        」   1点
  「 パプリカ      」   1点
【コメント】
 次点は順不同で『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』『博士の愛した数式』『間宮兄弟』『ハチミツとクローバー』『虹の女神 Rainbow Song』『デスノート』(前編後編それぞれ)『紙屋悦子の青春』『ウール100%』『暗いところで待ち合わせ』『おじさん天国』『武士の一分』『NANA2』『酒井家のしあわせ』などなど。
 こう見ると、充実した1年だったといえるか?

 2006年は邦画の興行収入シェアが洋画のそれを上回ったということで、一般のニュースでも取り上げられるほど邦画の好調振りが注目された。
 その邦画好調の数字をたたき出したのは、東宝をはじめとした邦画メジャー会社が拡大上映をしたものにヒット作が多かったからだが、ベストテンなどの作品としての出来の評価となると、そんなメジャー系が中心にはなっていない。
 それは私の選んだベストテンだけでなく、キネ旬などの他でも同様の結果であり、主なベストテン作品はメジャー系では『松子』『一分』『明日の記憶』『数式』あたりなのに対し、独立系は『フラ』『ゆれる』『雪に願うこと』『かもめ食堂』『紙屋悦子』となり、むしろメジャー系の方が劣勢である。
 以上のことを含め、今の日本の映画の状況をまとめると、
  ■映画の出来の良さがヒットに結びつかない。映画ジャーナリズムが機能していない。
  ■テレビ局が絡んだヒット作が多く、それ自体は悪くはないのだが、テレビで大量に宣伝することがヒットへの重要要素で、良い作品を作ることの重要性が相対的に低下している。
  ■ヒット作はベストセラー小説や漫画、人気テレビドラマなど、他メディアのオリジナルの人気に依存している部分が大きく、映画自身が発信源になることは少ない。
  ■邦画のシェアアップというより、ハリウッド映画のシェア低下と言った方が正確かもしれず、それは映画離れも意味するから、邦画にとっても良いことではない。
  ■駄作をはっきりと批判するメディアが乏しく、それが観る側の質の低下から作り手の低下へと移る。一度落ちたスキルをアップさせるのは難しく、長期的に見て問題になる。
  ■『硫黄島からの手紙』『バベル』などの日本の映画人が絡んだ映画が海外での評価されていることで盛り上がっているが、これは相変わらず海外の権威には弱い日本のメディアのダメぶりを示すもので、本来日本で真っ先に評価すべきことをしていなかったことを棚に上げて浮かれているなんて恥を知ってほしい。
といった具合に、実際は問題だらけなのではないか?
 例に挙げると、去年は韓流ブームの終焉も言われたが、(韓流はホントにあったのか?ホントに下火なのか?といった細かい考察はここでは置いておいて)、ブームで日韓の業界が峠を過ぎた時の対応を考えずに浮かれたため、下火ムードを鎮めることができなかったのではないだろうか?
 そして、これは邦画ブームにも起き得ることで、ひょっとしたら2007年早々、もしくは、去年後半の似たような出演者による似たような映画が集中して全体的に低調だった時から下降傾向が既に始まっていることかもしれない。
 しかも、韓国映画はまだ作品の力で勝負しようとしているから良いものの、邦画は上に述べたように既存の人気と大量宣伝頼みで、映画自身の力はなんとも心もとなく、今度のブームがブームとして終わって「邦画終焉」の烙印を押され、他メディアからも見放されることになったら、邦画は二度と立ち直れないことになるかもしれないとさえ思っている。
 だから、映画を愛するものにとって2007年が崖っぷちかもしれないとの危機感を持って、地に足の着いた映画の向上を目指して地道な努力をしていかなければならないと思う。

 最後に、私のベストテンについて、上から3つは今さらその良さをわざわざ言うこともないので、『紀子の食卓』の衝撃が大きかったことを特筆しておく。
 それにしても、『フラ』『ゆれる』のような手堅いオーソドックスな作りのもの、『好きだ、』『やわらかい生活』のような自然なさりげなさを感じさせるものから、『松子』『HAZE』のようなガンガンに作り上げたもの、さらには『紀子』『パプリカ』のように妄想が集団で拡大して自分自身を見失いそうなネット時代の現在進行形の状況を描いたものまで、日本映画はおそらくどこの国も成しえていないようなバリエーションの振幅の大きさ(特に4つめの集団妄想映画のような映画は、私の知る限り日本でしか作られていないいと言っていい)を持っていて、この素晴らしさは訴えていくべきだし大事にしていきたい。

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【監督賞】              作品名
   [ 中島哲也      ] (「嫌われ松子の一生」)
【コメント】
 他人にはなかなか真似できないような独自のスタイルと、映画全般に渡って観る者の感情を盛り上げる一方、表現にブレがなくトータルにまとまっていることを評価して。
 次点は、李相日『フラガール』、西川美和『ゆれる』、園子温紀子の食卓』など。

【主演男優賞】
   [ 光石研       ] (「紀子の食卓」)
【コメント】
 実は主演男優、助演男優共に他に該当者がなく、『紀子の食卓』の光石さんはどちらにも当てはまるということで、両賞ダブル投票としました。
 この投票方法が違反だということであれば、主演は『紀子の食卓』の光石さん、助演はそれ以外の多数の出演作の光石さんということでお願いします。>日本インターネット映画祭の方。
 それも違反だということであれば、助演は光石さん、主演は該当者なしということでお願いします。>日本インターネット映画祭の方。

【主演女優賞】
   [ 上野樹里      ] (「虹の女神 Rainbow Song」)
【コメント】
 次点は、吹石一恵紀子の食卓』、宮崎あおい『好きだ、』、中谷美紀『松子』『7月24日通りのクリスマス』、田中麗奈『暗いところで待ち合わせ』、寺島しのぶやわらかい生活』などなどで、数多くのライバルを押しのけて、一本の映画の中で多彩な演技をやってのけた上野樹里の上手さには、本当に舌を巻いてしまった。


助演男優賞
   [ 光石研       ] (「紀子の食卓」他多数)
【コメント】
 光石さんは『博多っ子純情』あたりから30年近く俳優を続けてこられて、最近は数多くの映画に出演しながらも、どちらかといえばずっと目立たない活動だったのだが、『紀子の食卓』ではついにその真価を発揮したと思えるほどの素晴らしさだった。

助演女優賞
   [ つぐみ       ] (「紀子の食卓」)
【コメント】
 『紀子の食卓』のつぐみさんは凄みがあって良かった。「つぐみのすごみ」ってやつだな…。

【新人賞】
   [ 北川景子      ] (「間宮兄弟」)
【コメント】
 次点は、(思いつくだけでは)吉高由里子紀子の食卓』で、他にも多数。

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