市川準監督の三回忌記念の一連のイベント「市川準・集」から、アミューズミュージアムでの「ミュージックビデオ、テレビ作品の上映と小川美潮スペシャルライブ」に行く。
長丁場のイベントで、食事ができないかもしれないので、電車に乗る前に高カロリー食「カツ丼」を食べる。
直後に、小川美潮の全曲名曲の大傑作アルバム「4to3」を予習するのを忘れたことに気付いたが、時すでに遅し。
表参道で銀座線に乗り換えてから、終点の浅草まで、1時間10分ぐらいかかって12:30頃に到着。
そこから歩いてアミューズミュージアムに着き、開演時刻13:00の15分ぐらい前に入場。
お客さんは10人ぐらい。
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まず13:00から「漂流姫(ひょうりゅうき)」(★★)(1986年、46分)の上映。
斉藤由貴主演のイメージビデオ。
ストーリーは…
斉藤由貴が人々を夢中にする「斉藤由貴問題」が起こり、彼女の映像は所持を規制され、彼女自身も刑事(品川徹)らに助けられ逃走する。
彼女が潜伏していると噂される香港で、彼女のファンたちと正体不明の殺し屋が居場所を探し回っていた。
刑事と殺し屋は相撃ちになり、ファンたちもサインや記念品を受け取っただけで去っていき、由貴はひとりぼっちになった。
斉藤由貴といえば避けて通れない「目の表情」を堂々と中心据えて、彼女のキャラもほとんど無表情の浮世離れした遠い存在に設定した、徹底した「アイドル映画」。
斉藤由貴がとにかく凄いので、ちゃんと彼女を撮れば、特別な味付け為しでも魅力的な作品になる、といった感じ。
斉藤由貴が変顔をした後に照れた顔のストップモーションで終わっているんだけど、『トットチャンネル』(1987年)のラストでも一瞬しかめっ面をしたところでストップモーションになっていたのを思い出した。
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続いて、ビデオクリップ集「PANT」の中から市川監督が演出した「終わりの気配」(★★)(1988年、7分)
哲学っぽい斉藤由貴のナレーションで始まって、図書館、都電、カレー屋などを巡るという、彼女のイメージに合った内容。
彼女とすれ違う役で、『BU・SU』(1987年)などの広岡由里子、柄本明などの東京乾電池メンバーが出演。
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終映が13:55頃で、次の開映時刻15:00までに時間があるので、浅草が終わってから東中野に行くために乗ろうと思っている都営浅草線の浅草駅を、土地勘が無くて迷ってウロウロしないために下見に行く。
浅草は、東京スカイツリーがよく見える。
ちょっと前よりも、また高くなっていた。
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14:30ごろに会場に戻ると、19:00からのライブのための楽器が搬入されていて、小川美潮さんと演奏メンバーが音合わせをしているところだった。
美潮さんを見るのは15年ぶりぐらい。
彼女に飽きたというより、音楽全般聞かなくなったから。
14:45ごろに美潮さんたちは退場。
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15:00から「男前・元木雅弘『ラッキィ』」(★★)(1994年、35分)
NHK-BS2で放送されたドラマ。
ファミリーレストランの副店長(モックン)が、実家で飼っていた亡き犬のラッキィに語りかける形式で、客や店員たちの人間模様や、いろどりのないの生活に悩み、店長に抜擢されて希望を抱くまでを描く。
市川監督得意の、人間観察ロングショットがここでも冴える。
彼と恋に発展しそうな予感のするウエイトレス役が石堂夏央。
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続いて、15:50から「真夜中の王国『純粋映像 市川準の五月の出来事』」(★★)(1995年、45分)。
NHK-BSの番組。
『トキワ荘の青春』(1996年)の撮影を控えた市川監督が、ビデオカメラで日活撮影所、スタッフ、首都高を走る車内、神社などを自分自身を含めて撮影しながら、「質問攻めにあったりすると、撮影所内の逃げ場に行く」、「リアルな思いを映像にするのは難しい」、「人を観ることをしたい」などと語る。
例によって、聞き取れないほどのボソボソトーク。
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続いて、16:30から「にっぽんの名作・朗読紀行『江分利満氏の優雅な生活』」(★★)(2000年、50分)
これもNHK-BS2の番組。
平田満が、東京都内、有楽町、鎌倉、横浜みなとみらい、学校などで朗読する。
「東京を撮らせたら世界一」の市川監督の東京の風景のショットが冴える。
終映は17:20で、気が付くとお客さんが100人ぐらいまでに増えていた。
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次は18:00から「4to3 Pictures」(★★☆)(1991年、44分)。
小川美潮のアルバム「4to3」10曲中8曲(チラシでは7曲となっていたけど、数え方によっては「天国と地獄」「ほほえみ」「On the Road」「Four to Three」「デンキ」「夜店の男」「窓」「おかしな午後」の8曲だと思う。「デンキ」が伴奏のみだから、これを除けば7曲。)のビデオクリップのような16mmフィルム撮り映像に加えて、板倉文と遊佐未森とそれぞれ1対1でトークをしているビデオ撮り映像を混ぜた構成。
フィルム映像では、美潮さんが古い家に老人(下元勉)と住む和服の女、自転車を乗り回して少年と知り合うパンツルックの女、浅草の東京クラブの地味なもぎりの三変化を見せる。
「窓」の映像は、以前観たビデオクリップとほぼ同じ編集で、ここだけはビデオクリップっぽいが、他の曲は筋の通った編集というよりも、いくつもの映像を切り貼りした感じ。
「4to3 Pictures」が先にあって、そこから「窓」だけをPVにしたのか?「窓」のPVを作るおまけで他の曲の映像も作ったのか?どっちはは不明。
しかし、そんな抽象的な映像でも、対象が自他共に認める天才ボーカリスト小川美潮の曲なので、音楽の力で圧倒されて、映像は音楽の邪魔にならなければいいか?と思ってしまう。
都内各地、浅草の古い建物などの、風景を上手く多用しているのは市川監督ならでは。
それから、制服姿の女子高生が横並びで歩いている後姿も、『BU・SU』にもあったので、市川監督の得意技か?
菅田俊の名前もクレジットにあったが、映画館の客の役かな?
「窓」で、銀座の中央通りの車道のど真ん中を自転車で疾走しているシーンは、トラックの荷台かなんかに自転車を据え付けて、そこにまたがった状態で走っているところを撮ったのだろうと思っていたが、エンドクレジットのメイキングでまさにその映像があって、積年の疑問がやっと解決できた。
板倉文とトークしているところで、「高校卒業してビジネススクールに通っているときに何か目立つことをやりたくなって、『歌でも歌うか』と思って歌手になった」とのこと。
デビュー前にもずっと歌ってたとしか思えない歌唱力なのに、そんなある日突然に歌いだしてあんなに本格的に歌えるのか?とビックリ。
それから、遊佐未森とのトークでいつまで歌い続けるか?という話になり、「見ばえが人前に出られなくなるほど悪くなるまでは長く続けたい。」と言っていて、その人が20年後にこの後にライブをするのは感慨ひとしお。
終映後、さらにお客さんが増えていて、会場ギリギリくらいの150人ぐらい。
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19:00に、予定通りライブ開演で、まず美潮さんだけが浴衣姿で登場して、アカペラで「花のまち」を歌う。
この曲は『BU・SU』で使われているので、その関係で追悼の意味をこめただけだとその時は思っていたが、後で調べたら美潮さんが時々ライブで歌っていて、さらに『BU・SU』の本編で流れる曲を歌っていたのが西尾美汐時代の彼女で、市川監督とは『つぐみ』どころか最初から関係があったことを知った。
続いて、バンドメンバーが出てきて2曲目以降が続く。
曲は最近のものは知らないので、知ってるのとタイトルと聞き取れたものだけを挙げると、「Four to Three」「はじめて」「デンキ」「軽い心」(曲:矢野誠)「はけの道」「窓」「おかしな午後」など。
久しぶりに聴いて、衰えるどころか前より表現の幅が広がった感じで、今でも他の追随を許さず、本当にすごい。
「窓」と「おかしな午後」を続けて聴くと、同じ人が歌っているとは思えない。
トークではまず、
「さっきの『4to3 Pictures』に映っていたのは私です。長く生きているといろいろあって、厚みが…。」
みたいなことを言った。
昼の音合わせの時に美潮さんを見たときになんとなく感じていたんだけど、20年前の映像を観たとき、改めて「そういえば彼女はひょろ長いイメージだった」と思い出した。
今はまぁ、「ひょろ長くはなくなった」と表現するのが正確かな?
ただし、見た目以外は、「人間、そう簡単には変わらない」と思うほど変わってなく、トークのとりとめの無い感じも昔のままだった。
あと、『4to3 Pictures』の撮影中に、市川監督に「歌ってないと絵にならない。」と言われたこと。
『つぐみ』のエンドテーマは、市川監督が「おかしな午後」を気に入って、つぐみに合っていると思って採用したことなどを話した。
アンコールで2曲歌って、予定の20:00ちょっと過ぎに大盛況のうちに終演。
美潮さんは受付に現れてCDを売っていたけど、次の予定があったのと、いい意味で凄いショックを受けて、頭の中が整理できなくなって、すぐに会場を出た。
美潮さんもだけど、僕の20年とか、音楽とか映画とか、本当に大事なものって何なんだろう?とか思いながら駅に向かった。
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この後、21:00からポレポレ東中野での「松江哲明『セルフ・ドキュメンタリー』刊行記念特集」を観に行くために、都営浅草線の浅草駅へと向かう。
前もって時間を調べていたので、時間がないと判って急ぎ足で行き、なんとか間に合う。
そして、東日本橋駅で降りて馬喰横山駅まで歩いて都営新宿線に乗り、新宿駅で大江戸線に乗り換えて東中野駅で降りるという、全く未経験のルートで行って、ちょうど21:00に劇場に到着。
するとロビーに、舞台挨拶の予定が無かったはずの松江監督がいて、その脇を通って入場。
お客さんは、ほぼ満席の80人ぐらい。
松江監督の舞台挨拶が5分間ぐらい開かれる。
今夜観に来たのは、未見の松江監督作品の『あんにょんキムチ』(★★☆)と、『イエローキッド』(★★★)が良かった真利子哲也監督の自主映画が観られる貴重な機会だったから。
予告編に続いて、まず『極東のマンション』(★★☆)の上映。
真利子監督が思いつきで8mmで自分を撮り始めたみたいなきっかけで始まるドキュメンタリーだが、室内の360度パンとか屋上のシーンとか、思いつきとは思えない程意志が感じられる映像のある映画。
続いて『マリコ三十騎』(★★☆)。
ふんどし一丁で大学内を走り回ったりなど、思いつきで無茶苦茶やっているだけになりがちなところ、この作品にも意図らしきものがある感じはちゃんとある。
続いて『あんにょんキムチ』。
僕は、人間を決めるのは「環境」であって「血筋」の要素はゼロに近いと思うのだが、それとは違う考え方の人がこのドキュメンタリーには多く出演するからといって、それはそれでちゃんと受け止めるし、興味深く観た。
終映は23:05頃で、渋谷から田園都市線に乗り換えて帰る。
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帰ってから、盛りだくさんだった今日のことを、忘れないうちにブログに書き始める。
内容が多いだけでなく、美潮さんや市川監督や斉藤由貴のことを書くために、ネットで情報を集めたり、美潮さんのCDをひっぱり出してきて聴いたりしたので、今夜中には書き終えられないだろうと思った。
そのうち、動画サイトまで手を伸ばして見てしまった。
中でも驚いたのはテレビで「福の種」を歌っていた1980年頃のチャクラで、動いている映像は当時も観たことがなかった。
「福の種」は、サビのインパクトが大きくて、リズムは音頭で、美潮さんはこぶしを回すしで、変わった曲扱いもされたけど、改めて聴くと美潮さんの歌唱力が圧倒的に凄くて、変わってるけどしっかりした曲で、それゆえ覚えている人が多いのかな?
あと、はにわオールスターズのライブで、美潮さんが「ブンガワン・ソロ」を歌っている映像。
以前、日本語で歌う別バージョンの録音を聴いたときは「ブンガワン・ソロ史上最高の歌唱」に違いないと思っていた。
明け方までブログを書き続け、大幅に書き残したところで時間切れ。