シネサルの「映画のブログ」

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「放送禁止〜ワケあり人情食堂〜」 ★★☆

【演出】【脚本】【原案】長江俊和
【出演】?
ストーリーテラー有田哲平
2017/01/02(月)25:50-27:20、フジテレビ放映
2017/01/11(水)鑑賞
<ストーリー>
 海外でボランティアの経験もある女主人が客の悩み相談も買って出る東京近郊の人情食堂に、テレビのドキュメンタリー撮影隊が入り取材を始めた。
 彼女は、恋愛がこじれたフィリピン人同士のカップルの女性の方の相談を受けて匿ったりもした。
 常連客の同性愛のトラック運転手の男が、同じく常連客のインドネシア人の職業訓練生の男に告白したが、振られて逆上して殺すという事件が起こった。
 しかし、その殺された男は、2年前に海外で富豪を殺して日本に潜伏していると外国人の間で噂になっていた逃亡犯だったことが判った。
 女主人は食堂を閉めることを決め、後日スタッフが訪ねると閉店した後で連絡も取れず、取材テープは放送されずお蔵入りになった。
<感想>
 2003年4月1日の深夜に何の予告もなく放送された「放送禁止」【感想】の第1作目は、見た目はまるっきりドキュメンタリー番組だったが、フェイクドキュメンタリーであるというネタバラシを明確に行わないまま終わるという「純粋なフェイクドキュメンタリー」で、曖昧なネタバラシや放映日がエイプリルフールであることを理解できなければ、番組内容は実際に起きたことだと思う人もいるかもしれない挑戦的なものだった。
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 2作目以降も1作目と同じ作りなのだが、「放送禁止」と銘打ってる時点で裏に別の物語が隠されてることを知ってる人に見せる作品を作ることになるので、番組の狙いは「フェイクドキュメンタリー」から、「ヒントが散りばめられている謎解きドラマ」に変わった。
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 劇場版を除けば9年ぶりになる今回の新作は、有田哲平ストーリーテラーに配して、本編前に「これからクイズが始まるので、テレビの前の皆さん解いてみて下さい」の意味のことを言わせ、本編後にていねいな謎解き解説をしてみせている。
 即ち、「ヒントが散りばめられている謎解きドラマ」であることをより明確にしめしている。
 これは、レギュラー番組が放送されない年末年始に、新番組の候補の企画をお試しで放送する「パイロット版」として作られ、これまでの深夜枠から抜け出し、ゴールデンでの放送も視野に入れているためかもしれない。
 前作までのフェイクドキュメンタリー色の強い構成なら、視聴者が事実だと誤解するおそれがあるので、ゴールデンの放送は無理だろうが、「ドキュメンタリーとみせかけて実はドラマである」ことを解りやすく示すようになった本作の変更の理由は、ゴールデンでの放送を狙ってると考えるのが一番しっくりする。
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 本作のヒントの中には、食堂の店内に貼られたメニューに「答え」そのものが書かれていることに代表されるように、リアリティ無視で謎解き重視で、何よりテレビの取材を受けるというリスクでしかないことをするのが不自然極まりないので、視聴者に親切な謎解き番組になってしまったことが、視聴者に不親切な番組にしてまで野心にあふれた1作目を気に入っている者にとっては寂しい。
 でも、今まで「ドラマ形式の謎解き番組」や「あっと驚く展開(どんでん返し)がある番組」はたくさんあったが、ネタバラシによって「見たはずの映像に気付かないことがあったことを知ってゾッとする」ことの面白さを提供する番組は他に憶えがないので、本作の新路線は多くの人に斬新な番組として受け入れられるかも、と思った。
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 あと、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』『パラノーマル・アクティビティ』のような海外産のフェイクドキュメンタリーは、1作目が成功すると2作目以降を「もっと面白くしよう」と思って「盛った」演出をして、結果的にリアリティがなくなって雰囲気台無しになるのだが、「放送禁止」をはじめとする日本産は続編でも「ドキュメンタリーに見えること」を最優先する姿勢を崩してないのは素晴らしい。
 本作でも、「カメラがブレた映像」なんてドラマでは絶対に使わない映像を使って、仮編集っぽさを出していかにも実在の未完成映像にみせかけるなど、芸が細かい。