シネサルの「映画のブログ」

星(★/☆)の採点は、★4つで満点 ☆は0.5 ★★★★人類の宝/★★★☆必見/★★★オススメ/★★☆及第点/★★中間レベル/★☆パスしてよし/★ひどい/☆この世から消えろ

 『おくりびと』オスカー受賞後騒動について雑感 ★☆

 『おくりびと』の日本における扱いは、日本時間2月23日(月)のアカデミー外国語作品賞受賞の前後で、大きく変わったのはご存知の通り。
 以下に、その変化の数々に対してコメントします。
 ▼オスカー授賞式の1週間ぐらい前から、全国の映画館で再上映が始まったが、オスカー受賞を受けて動員が急激に増えて、2/28(土)と3/01(日)の2日間の興行収入は、新作映画を抑えて1位になった。
 これの意味するところは何か?というと、以下のことが考えられる。
  ▽2/20(金)の日本アカデミー賞受賞をはじめ、それまでに既に国内の映画賞で『おくりびと』に関する賞を60も獲っているのだが、それらの賞はすべてアカデミー賞に比べれば話にならない程のものでしかないという認識を持っているということか?
  ▽国内の賞の結果は芸能ニュースで取り上げられるのに対し、オスカー受賞は社会ニュースとして取り上げられたという違いによって、認知度が違ったからか?
  ▽黒澤明の『羅生門』の昔から変わらず、日本人は自国民からの評価には冷たいが、外国から評価されるとコロッと態度を変えてそれに乗っかるということか?
 ▼オスカー受賞を受けて、あれだけたくさんの人が『おくりびと』を観に行ったということは、その人たちは映画には基本的に全然関心が無くて(もし少しでも関心があれば、オスカー受賞以前に国内の映画賞の受賞の数で、2008年を代表する映画と認識して観に行っているはず。)、よっぽどのことが無い限り映画館に行かないような人たちだと思われ、そしてオスカー受賞がまさにその「よっぽどのこと」だったから観に行ったということではないか? さて、映画の興行に関わっている人は、このヒットをどのように考えているのだろう?
  ▽映画人口が伸び悩んでいるが、思ってもみないところに「鉱脈」があったことが判ったので、その鉱脈をなんとしても開発して、映画人口の大幅増を狙う。
  ▽「鉱脈」とはいっても、オスカー受賞レベルの起爆剤がなければ動かないようでは、ほとんど期待できず、よってそこには手をつけずに、これまで通りでやっていく。
 ▼『おくりびと』と、『つみきのいえ』の短編アニメーション賞の2つの受賞を受けて、日本映画の地位が上がったというコメントをしたメディアがあったけど、年間数百本公開されている日本映画のうち、2本だけが評価されただけで、何故日本映画全体が評価されたようなことを軽はずみに言えるのか? まあ、何にも考えてないんだろうな?
 ▼オスカー受賞で劇場動員が増えたこと以外の変化として、『おくりびと』を2008年度ワーストワン映画に選んだ雑誌「映画芸術」に対する批判が急激に増えたようだ。 この理由は、
  ▽それまで映画芸術ワーストワンの結果を知らず、オスカー関係の何かのニュースで報じられたのを目にして初めて知ったから?
  ▽ワーストワンの結果は前から知っていたが、オスカー受賞という権威をかさに着なければ批判したくても出来なかった人が多かったから?
 ▼映芸ベストテン/ワーストテンは、数十人の選考委員によって公正に選んでいるというのは表向きだけで、実態は1人ないしは数人の意向に沿う結果になるように投票後に集計方法を変えていると思われる。(こちらを参照) つまりは、1個人の独断で選んでいる「シネサルベストテン」なんかと同じで、公共的なモノとしては「終わっている」と言え、終わっているモノに対しては、改めて批判する意味も無く、黙殺すればいいだけである。 ところが、そんなワーストテンの『おくりびと』ワーストワンに対して批判をしたことは、結果的に映芸ワーストテンを「まともなもの」という認識を持っているという意思を表していることになり、よって今回の批判の集中は雑誌「映画芸術」にとっては存在感向上につながる、降って湧いた幸運だろう。 そんな逆効果の批判をした人たちって……。
.
 そんなわけで、今回の『おくりびと』の盛り上がりがいいことなのか?悪いことなのか?よく解りません。
 まあ、日本映画にとっていい方に変わるんだったら、どうでもいいです。
 みんな、よろしく。
.